あのね、先生。-番外編-
「…まあ、今日くらいなら」
クリスマスだっていうのに朝から働き詰めで、妻子がいるという先生達はとっくに帰ってしまった。
そうなると必然的に終わらなかった分は若い先生達に回ってくるわけで、回ってきた仕事でさえ、俺と中村先生の分は多い気がする。
他の若い先生達は上手く適当な理由付けたみたいだけど、とっさに聞かれてデート以外の理由が思い浮かばなかった。
それは多分中村先生も同じ。
「結婚してる先生が優先されるのはまあ仕方ないですよね、子供がいるなら尚更」
「相変わらず心広いっすねー」
「文句言いながらでも中村先生だってちゃんとやってるじゃないですか。同じことですよ」
心が広いからってわけじゃない。
この仕事をすっぽかして茉央ちゃんのところに行きたいのは山々だけど、そのとき彼女がどんな気持ちになるか。
喜ぶとは到底思えない。
それなら遅れてもいいからちゃんと仕事してきて、って言うよね、きっと。
こんな日だからこそ、会うときには全部終わらせて茉央ちゃんのことだけ考えていたいから。