あのね、先生。-番外編-
コートの色を言われたのと同時くらい。
ちゃんと屋根の下で待っててくれた茉央ちゃんの姿が見えて、思わず駆け寄った。
笑顔で手を振る彼女が見えると、何かもうたまんなくなって。
「茉央ちゃん!」
寒さで真っ赤になった頬に手を当てた。
「わ!つめた!」
「んふふ、蓮くん手あったかいね」
その手をキュッと握った茉央ちゃんの手も、頬と同じように冷たくて。
「遅くなってごめんね」
「大丈夫だよ、そんなに待ってない」
そんな嘘、冷たい手と頬を触ればすぐに分かるよ。
「蓮くん、あのね…」
いつも以上に緩く笑う茉央ちゃんが、俺を見上げて頭に乗った雪を払ってくれる。
「やっぱあれ蓮くんだよ!」
そんな声が聞こえるまで、多分俺、茉央ちゃんが可愛くて顔が緩々だったんじゃないかな。
横から聞こえた声に、心の底から、最悪だと思った。