あのね、先生。-番外編-
薬指に光る ‐茉央×蓮‐
「茉央ちゃん、手見せて」
いつも通り、仕事帰りに蓮くんの家に来て、2人でご飯を作って食べた後まったりしてた時だった。
「手?」
蓮くんが笑顔で言うから、両手を差し出す。だけど蓮くんは左手だけをジッと見つめてた。
あれ、右手はおよびじゃないのね。
「何?手相?」
「んふふ、俺手相なんて見れないよ」
「じゃあ何?」
「んー、内緒」
いつも絵を描く時みたいな、真剣な目で左手を見つめてる蓮くんは、今度は自分の左手とあたしのを交互に見始めた。
「…ね、ほんとに何?」
「教えない」
「そんなに見られたら気になっちゃうよ」
絵を描く時の蓮くんは、いつもの可愛くてゆるゆるした蓮くんなんてどこにも見当たらない。
ほんとにこの人は、ギャップってやつのふり幅が大きい。
そんな目であたしの左手をジッと見つめるもんだから、何だか恥ずかしい気持ちになってきて。手汗かいてないかな、なんて気にしたりして。
「蓮くん?」
恋人の左手を見つめる意味って何なんだろう。