あのね、先生。-番外編-
「蓮くん、もうお昼食べる?」
「んー、まだいいや」
出来上がったお昼ご飯をそのままにして、手を洗ってキッチンから出る。
こっちおいで、と言うようにソファをポンポンとたたくから、何だか嬉しくなって蓮くんにピタリとくっついて隣に座った。
こういう瞬間に、ああ、あたしはこの人のことが好きだ、と実感する。
「茉央ちゃん」
「ん?」
「ちょっとわがまま言っていい?」
「んふふ、なーに?」
ふにゃんと笑った蓮くんは、少し体をあたしの方に向けて手をギュッと握る。
「何年経っても、今日みたいに休みの日はデートしよう」
「んふふ、うん、する」
「喧嘩しても、寝るときは絶対一緒」
「うん、もちろん」
どうしたんだろう、急に。
笑顔の蓮くんは、幸せそうに一つ一つ”わがまま”を言っていく。
全然わがままなんかじゃないのに。むしろあたしだってそうしたいと思ってる。
「不安に思うことがあったら、ため込まずに全部俺に言って?」
「…うん」
前に蓮くんと付き合ってた時、不安だって思うことがあることを言わなかった。言わずに伝わるはずがないのに。
だからもう二度と同じことは繰り返さない。