あのね、先生。-番外編-

そうか、去年はあたし加地くんと過ごしたんだっけ。付き合ってたし。

だけどそれは蓮くんには言わないでおこう。きっと気分がいいものではないと思うし、今こんなに機嫌がいいし。

「ほんとはね、チョコの代わりに頑張って蓮くんが好きな料理いっぱい作ろうかなって思ってたの」

実際去年のバレンタインには、加地くんの好きな料理を作ってあげた。

だけど相手は蓮くんだ。


「蓮くん甘いもの好きでしょ?」

「うん、好き」

「料理は普段でも作ってるでしょ?お菓子なんて作ることないから、年に一回くらいいいかなって思って」

そっか、なんて言って蓮くんは離れてあたしが切った野菜を鍋に入れていく。

「茉央ちゃんも一緒に食べよう」

「え?」

「せっかく作ってきてくれたんだから、一緒に食べようよ」

まだあげるなんて言ってないのに、蓮くんは嬉しそうに笑う。

…あげないなんて選択肢はないんだけど。
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