あのね、先生。-番外編-
「あ、そうだ。今日高橋さんの家に集まるみたいですけど、どうします?行きますか?」
「…いや、断りました」
「え?いいんですか?」
いつもは強制的に参加させられるその集まりも、多分篠原先生が断った理由を説明してくれれば、白城も諦めるだろう。
今日は吉野先生も俺も学校に行く予定はなくて、それがちょうど記念日だったから久しぶりに一緒に出掛けてるわけで。
いくら恋愛下手とはいえ、こんな日にわざわざ仲間内の集まりに行くほどバカじゃない。
「…今日、半年ですよね」
「え?」
自分でも、半年記念日を覚えてたことに驚いた。
付き合い始めたときは多分すぐ忘れるんだろうなって思ってた。
「…覚えてたんですね」
驚いたような声でそういうから、俺ってやっぱそういう風に見えてんだなっておもって。
「さすがに記念日くらい……え、何すか」
俺の腕をつかんで後ろを歩いてた吉野先生は、目に涙を溜めて嬉しそうに笑ってた。
何、泣かせるようなこと言ったっけ。
いやいや、なんか嬉しそうだし。
「覚えてないと思ってたから、嬉しくて」
「…俺そんなに冷たいやつに見えます?」
下を向いて顔を隠すから、多分見られたくないんだろうなって思ってそのまま歩く。