あのね、先生。-番外編-
「え?え?ちょっと待ってください」
混乱する吉野先生をよそに、飲み終わったビールの缶を潰して新しいものを開ける。
「どういうこと?」
「…俺難しいこと言ったつもりないんだけど」
ただ、毎日ここに人がいて、こんな風に一緒にご飯を食べるのもありかなって思った。
「同棲ってことですか…?」
同棲か。
そっか、そういうことになんのか。
「そうなりますね」
「…同棲…」
何を考えてんのか分からないけど、難しい顔をして動かない吉野先生。
俺そんな大層なこと言った?
「…あの、嫌ならいいんですけど」
「嫌だなんてそんな!むしろいいのかなって…」
シュンと俯くから、思わずため息。
「俺から言ったんすよ。むしろこっちからしてみれば、一緒に住んでくれた方が安心なんですけど」
ストーカーみたいなやつがいるって聞いて、そのまま放っておくほど冷たい人間じゃない。
「もう生徒にはバレてるようなもんだし、先生達も薄々勘づいてんでしょ。別に問題はないと思いますけど」
朝一緒に通勤したって、今更いろいろ聞いてくるような人ももういない。
それなら、一緒に暮らしたって面倒なことはないし。