あのね、先生。-番外編-
ただの誕生日。
今年が特別だってわけじゃない。
毎年来るものだし、24歳っていうなんの特別味もない歳だし。
…でも、一緒に祝いたかったな。
白城くんが悪いわけじゃない。
仕事を任されるのはいいことだし、それを放り出してまで帰ってくるような人じゃないってことはちゃんと分かってる。
そんな人だから好きになったんだ。
明日は休みだって言ってたし、ちょうどあたしも明日は休みだ。
祝うのはまた明日でもいい。
去年もそうだったんだから。
学生じゃない。社会人なんだから、誕生日を祝えないなんてことがあっても、それは仕方がないことなんだ。
…でも、今日は帰ろう。
何時に帰ってくるか分からない彼を待つのはいい。だけど、今日を過ぎて帰ってきた彼に普通に接することなんてきっと出来ない。
…少なからずあたしは今日を楽しみにしてたから。
毎年祝ってくれなんて言わない。
だけど、あんな風に言ってくれたから、今年は一緒にいられるかなって、期待してしまっていたから。
【ごめんね、今日は帰るね】
カバンを持って立ち上がって、メッセージを送信したのと同時くらいだった。