あのね、先生。-番外編-
「…急いで帰って来てくれたんだね」
「うん、だって高橋の誕生日じゃん」
「あはは、ほんと、すごい汗」
「俺もまだまだ若いな。会社から全力疾走で帰ってきたけど余裕」
嘘つき。
疲れてるの、分かってるよ。
こんなに遅くまで仕事して、あたしのために走ってきてくれたんだよね。
「よかったのに、明日でも」
…嘘。ほんとは今日がよかった。
今日会いたかった。
「ちゃんと今日渡したいものがあって」
ニッと笑った白城くんは、ポケットから小さな箱を取り出す。
「これ…」
「誕生日おめでと、梨花」
…ほんとに、素直な人。
あたしが喜ぶのを楽しみに待ってるのが、笑顔を見てると分かる。
約束、簡単に破る人じゃないもんね。
今年は祝うって言ったのは、これを渡したかったからなんだね。
貰うあたしよりも彼の方が笑顔で、貰うあたしよりも彼が嬉しそうで。
ほんとに底抜けにいい人なんだよね。