あのね、先生。-番外編-

「蓮くんのお姫様抱っこ」

きっとあの光景はみんなの目にしっかりと焼き付いてるんだろう。

「いやー、あれはすごかったよね」

当人よりも2人の方が盛り上がってる感じが何だか面白い。

蓮くんもそれを笑って見てる。


「俺今でも覚えてるよ、あの女子生徒たちの悲鳴」

「うん、俺もそれは覚えてる」

「あたしもー」

覚えてないのはあたしだけか。

「茉央ちゃんは意識なかったもんね」

「そうなんだよね、浮いた感覚だけは何となく覚えてるんだけど、悲鳴なんて全然聞こえなかったし」


それを覚えていないのはもったいない気がするけど、過ぎてしまったものはもうどうしようもない。

でも体育祭が終わってもしばらくいろんな子に声かけられたな。

何てったって、蓮くんにお姫様抱っこされてたんだもんね。そりゃ悲鳴もあがるよ、仕方ない。


「懐かしいな、ほんと」

「あれこそ青春だよね」

ほんとにこのカップルは。

若干からかわれてるのが何となく分かるんだけどな。

だってほら、ちょっとニヤニヤしてんじゃん。


「あのときはもう付き合ってたよな?」

「夏休み前からだからね」
< 234 / 237 >

この作品をシェア

pagetop