あのね、先生。-番外編-

「じゃあやっぱ2人もあの時に戻りたいって思うことあるんじゃねーの?」

そう言われてふと思い出したのは、前にみんなで海に行った時に蓮くんと話したことだった。

正直、戻りたいと思うことも寂しいと思うこともあった。だけどそれを分かった上で、隣にいてくれた蓮くんの存在がとても大きくて。

「あるけど、きっとこうしてたまに思い出すからいいもんなんじゃない?」

ほら、やっぱり少し大人なんだ。


「戻れたら楽しいことに変わりはないと思うけど、こんな風に昔のこと話してんのも楽しいじゃん?」

そのくせ、こんな風に楽しそうに笑うところはあたしたちと変わらないんだから。

「蓮くんいいこと言うよな」

「そりゃあね、篠原先生は現役教師なんだから」

「あたしたちより年上だしね」


きっと恵まれていた。

こうして卒業して就職して、結婚もして、それでもこうして会って昔話を出来るような友達が傍にいることも。

愛おしくて、大事な人があたしを好きになってくれたことも。

…春が元気に育ってくれてることも。

あの時蓮くんに出会えて、好きになって、あたしの人生は大きく変わったんじゃないかなって思うの。


「俺、教師になって元生徒とこんなに仲良くなるなんてあの時思ってなかったよ」

「正直、俺もそれは思ってたけど」

「あたしは白城くん以上にそう思ってたけどね」

「んふふ、みんな同じこと考えてるんだね」

多分ね、加地くんもそう思ってたよ。
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