あのね、先生。-番外編-
「茉央ちゃん」
蓮くんはいつもみたいに優しい声であたしを呼ぶけど、聞こえないフリをしてソファへ座った。
別に見たいわけでもないテレビをつけてみたけど、当然内容なんて全然頭に入ってこない。
「まーおーちゃん」
蓮くんは知ってるんだ。
少し寂しそうに笑ってる蓮くんを見て、あたしが無視出来るわけないってことを。
「…何?」
視線はテレビに向けたままだったけど、返事をしてみた。
すると蓮くんは、嬉しそうにふにゃんと笑ってあたしに近づいてくる。
…甘い匂い、してるのに。
「おいで」
ソファに座ったあたしの前で、あたしに目線を合わせた蓮くんは、両手を広げておいで、なんて言う。
いつもなら飛び込むところだけど、今日は飛び込んでやるもんか。