あのね、先生。-番外編-
蓮くんは自分がすごく甘い匂いをさせてるってことに気づいてるんだろうか。
いつもと違う匂いが、あたしにとってはすごく嫌だってことに気づいてよ。
「……や」
いつも喧嘩したときは蓮くんが折れてくれて、あたしをすごく大事そうに優しい手で抱きしめてくれる。
それを拒否したことなんてなかった。
だから蓮くんは、あたしが首を横に振ったことに驚いてた。
「…俺、いや?」
蓮くんが嫌なんじゃない。
チョコを渡す権利は誰にだってある。もちろん生徒にも、教師にも。
それを受け取らないでとは言わない。ただ、少し嫌だなって思っただけ。
この嫌な気持ちをどうにかしてほしいだなんて、思ってないんだよ。
少しすればこんな気持ち、どこかに行っちゃうんだから。自分の中で飲み込めるまで時間が欲しいの。
…でもね、それを蓮くんに言うのは嫌だから、今は話したくないの。