あのね、先生。-番外編-
「…茉央ちゃん、こっち見て」
こんなことで蓮くんを見れなくなってしまうような自分が嫌い。
嫉妬するようなことじゃないのに。それは分かってるのに、独占欲が強くて困っちゃう。
「…ねぇ、蓮くん」
「ん?」
こっち見て、って言った蓮くんの言う通り顔を上げることは出来ないけど、ふと思い出した。
前もこういう気持ちになったことがあったな、って。あの時も蓮くんにそのことは言えなかった。
言うって約束したのに。
「…ごめんね、蓮くんは悪くないよ」
だから、そんなに悲しそうにしないで。
バレンタインデーなんて、ただのイベントで。そんなもので嫌な気持ちになるなんて嫌だから。
「ご飯作るね」
キッチンに置いてあるお菓子のことは、気にしないでおこう。なんて思って蓮くんに笑顔を見せた。