あのね、先生。-番外編-
だけどそれじゃ蓮くんは納得しなかったみたいで、立ち上がってキッチンに向かうあたしの手首を掴んだままついてくる。
「蓮くん?」
「茉央ちゃん、今日何の日か分かる?」
分かるよ。
もし忘れてたとしてもきっと、帰ってきたあなたの荷物を見て思い出したんじゃないかな。
「うん、バレンタインでしょ?」
あたしだってちゃんと蓮くんにあげるチョコ用意したんだよ?
…いっぱい貰ってるからもういらないだろうけど。
「…俺にくれないの?」
キッチンに立ったあたしの後ろに立って、肩に顎を乗せる彼は、とてもじゃないけど7歳年上とは思えない。
くれないの?って、蓮くん美味しそうなのいっぱい貰ってるじゃん。
「…あたしのはいらないでしょ」
もう、忘れようとしたのに。
気を紛らわせようと野菜を切り始めるけど、蓮くんはベッタリくっついたまま離れる気配がない。