俺様紳士の恋愛レッスン
「エン、時は金なりって言葉は知ってんな?」

「時間はお金と同じくらい大事だよ、って意味だよね?」

「そうだ」



十夜は私を見つめる。

言いたい事は分かってるよな、と険しい目つきで。



「全ての経験に無駄なことはない。6年の月日にもそれなりの価値はある。
だけどエンは今まで、自分の時間、つまり財産が消えていく様を、見て見ぬふりをしてきた。
財産を他に費やせば、もっと大きな報酬を得られたかもしれない、それを分かっていたのにだ」



十夜は決して視線を逸らさない。

並べる言葉は厳しくても、その口調は宥(なだ)めるようで、諭すようで。



「失った財産は嘆いたって戻らない。だからお前はこれから生まれる財産を、より一層大事にしろ」

「……はい」


それまで冷徹な対応をされていたからか、ほんの少しだけ優しさを乗せた言葉はじん、と沁みて、思わず目頭が熱くなる。

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