俺様紳士の恋愛レッスン
「悪質すぎる……!」



冗談だとは分かっていても、一向に鳴り止む気配のない心臓。

好きになるなって言ったくせに。

優秀なコンサルタントなら、これが思わせぶりになるってことくらい気付いてほしい。



『とーやのバカ』

『わりーわりー』

『バカバカバカバカバカ』



悔しさを指先に集約させ、何度もその言葉を送りつけていると、不意に画面が切り替わった。

勢いでうっかり『応答』をタップしてしまった私は、慌ててスマホを耳に当てる。



『バカって言ったほうがバカなんだろ?』



耳をすり抜けたその声に、全身の細胞が奮い立った。



「だっだってだって十夜、悪質なんだもん!」

『さぁ、何のことだか』



プライベートな低い声は、電話を通じて更に半トーン落ちる。

語尾に残る呆れた笑いは、今の十夜が感情を殺していない証拠。


突然電話してくるだなんて、悪質を通り越した、悪業だ。

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