俺様紳士の恋愛レッスン
6月中旬

今だけオレを好きになれ

「つまり失恋しちゃったのね。どんまいエン」



続けて「この部屋暑い」とぼやきながら、萌はブラウスの胸元をパタパタと扇ぐ。



「いやそもそもさ、私十夜に好きとかヒトコトも言ってないんだよ?」

「エンの正直すぎる態度を見てれば嫌でも伝わるよ」

「私ってそんなに分かりやすい?」

「何を今さら」



萌は今日も完璧に美しい唇を結んで、ふふっと笑う。



ランチを終えた私たちは、社内の休憩スペースでガールズトークの続きをしていた。

爽やかな春は面影を失くし、生温い陽差しが部屋を包む。



「私が失恋する相手はタカちゃんのはずなのに……」



じっとりとした空気も相俟って、私の気分はどんより重い。

盛大にため息をついた私の隣で、萌は「んー」と唸りながら、湿気にも負けないふわふわパーマを弄ぶ。

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