俺様紳士の恋愛レッスン
「篠宮さん、分からないことがあれば仰ってくださいね」



顔を上げれば、またしても私の表情を窺う視線とかち合い、堪らず視線を逸らす。



「……大丈夫です。もう諦めます」



そう、言い終えてからはっとする。

ついもやもやが態度となって出てしまった。


怒らせたかな、と恐る恐る視線を上げると、その先にある表情に目を疑った。

ビジネスモードであるはずの十夜が、確かな驚きの顔をしていたから。



「おい篠宮、諦めたらそこで試合終了だぞ!」

「えっ!? あ、はい。でもやっぱり私には難しくて無理そうです。あははー……」



室長の呑気な発言を躱(かわ)しつつ、チラリと視線を戻すけれど、既にいつもの緩やかな笑みに戻っていた。

十夜は何事もなかったかのようにお冷を一口飲み込むと、袖を引いて腕時計を確認する。

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