俺様紳士の恋愛レッスン
「あは。なんか恥ずかしいね」

「ね。昔はよく手繋いでたのに」



一度跳ねた心臓は、トクトクとむず痒い心拍数へと変わっていく。

今はまだ、気恥ずかしさや緊張からくるドキドキだったとしても、こうして少しずつタカちゃんとの時間を取り戻していけば、情は再び色を宿すのかもしれない。


こんな私を受け入れてくれたタカちゃんのためにも、沈んでばかりはいられない。

一刻も早く、“彼”との記憶を消さなければ。



「次、あの服屋さん見ようか」

「うん」



店に向かって歩いていくと、向かいから道幅いっぱいに広がって歩く家族がやってくる。

タカちゃんはスッと私の後ろに身を引いた。

すると、私の足が反射的に歩みを止める。



「エンちゃん?」

「えっ? あ、ごめん。なんでもない!」



無意識の行動に自分でも驚いて、慌てて笑顔を返した。

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