俺様紳士の恋愛レッスン
穏やかだった鼓動は音を変えて、喉の奥がきゅっと狭まる感覚が降りてくる。

痛みになる前に誤魔化したくて、「あ、あれ可愛い!」と目先にあった服へと走った。



「うん、エンちゃんに似合いそう!」

「ホント? ちょっと試着してくるね!」



ハンガーを手に取り、試着室へと逃げ込んだ。



「……ふぅ」



カーテンに覆われた個室の中で、思わず漏れた大きな溜め息。

賑わう店の雑音よりも、自分の心臓の音が煩い。



「何やってんの、私のバカ」



持ってきた服をよく見てみれば、私には合わないLサイズだった。

それが余計に虚しさを誘って、胸の痛みに加担する。



今、私の本能は『強引じゃない力』に違和感を感じてしまった。

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