俺様紳士の恋愛レッスン
嫌でも想像してしまう。

彼なら私を強引に後ろに追いやって、自らが前に出たのだろうと。


ほんの2ヶ月前までは、私の前を行く背中にこそ違和感を覚えていたはずのに。

いつの間に逆転してしまったのだろうか。



「……最低。忘れろ、私」



そう言い聞かせるのに、鼻の奥がツンとしみ始める。

どうやら昨日大泣きしたせいで、涙腺が緩んでしまっているらしい。



「忘れろ、忘れろ!」



何度も念じて息を吐き、落ち着いたところでカーテンを開ける。

するとタカちゃんが目の前に立っていて、思わずピクリと肩が跳ねた。



「あれ、気に入らなかったの?」

「あ、うん、想像と違った。残念!」



これから私が頼っていくのは、強引な力ではない。



「そっか。じゃあ他のも見てみようね」



穏やかで優しくて、意地悪とは正反対の愛情だ。

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