俺様紳士の恋愛レッスン
「エンちゃん」

「ん?」

「あのさ……」



タカちゃんは何やらはにかみつつこちらへやってくると、じっと私の顔を見つめる。



「タカちゃん?」

「あーっと、えっと……」



何かを言いたそうにしているタカちゃんを見て、はっとした私はタオルケットに手を伸ばす。



「いやぁー今日はたくさん歩いて疲れたね! さっ、早く寝よ寝よッ!」



大げさに伸びをして、布団の中へと潜り込んだ。


タカちゃんは「そうだね」と笑って、それ以上は何も言わない。

暗くなった部屋の静寂に、ズキズキと痛む胸の音だけが響いた。



見つめられた瞬間、キスされるのかと思った。

もうタカちゃんとは4年もそういうことをしていないから、改めて向き直られるとどうしていいか分からない。

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