俺様紳士の恋愛レッスン
「どーせ真っ赤になってんでしょ!」

「なってねぇ」

「心臓の音で分かるもん! 本当は恥ずかしくて仕方がないんでしょ!」

「……相変わらず」



その口調は、冷ややかに落ちて。



「減らねー口だな」



押し付けられたのは、反して柔(やわ)い、熱。

背中に壁がトン、と当たったのを合図に、それは音を変えて私の中へと侵入してくる。



「――ッ!」



あの雨の日と同じ。

「もっと教えて」と言わせるような、強引で俺様なキス。


降り注ぐ愛撫は、目を開けることすら許してくれない。

必死に与えられる熱を受け止めて、縋(すが)って、それでも全ての呼吸を奪われて。


名残惜しげに唇が離されると、コツン、と額に額を当てられた。



「――円華」



荒ぶる呼吸が、一瞬、止まった。

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