俺様紳士の恋愛レッスン
「とーや! おかえりっ!」

「おー」



飼い犬の如く、帰宅した主人に飛びつく私を、嫌がるわけでも喜ぶわけでもなく、今日もサラリと受け止める十夜。

その無表情を、下からじっと見つめた。



「十夜、おかえり!」

「……おー」

「お、か、え、り!」



催促するように捲し立てると、十夜は私から逃れるように顔を逸らし。



「…………ただいま」



眉間にしわを寄せ、頬を淡く染め、少し不機嫌に呟いた。

途端に胸がきゅっと鳴って、嬉しさに堪らず、背伸びをして十夜の頭をガシガシと撫でる。



「うん、うん! よくできましたっ! さ、ご飯にしよ!」

「……おー」



それは、昨日の夜の話。

いつまで経っても「ただいま」と言ってくれない十夜に少々の不満を感じて、「ただいまの一言がそんなに恥ずかしい?」と吹っ掛けた。

すると十夜は「ンなことねーよ」と反論し、今に至る。

< 372 / 467 >

この作品をシェア

pagetop