俺様紳士の恋愛レッスン
全身の細胞が、足先からきゅうっと奮い立つ。

じわりと胸に染みる感動が、同じように目頭を熱くさせた。



「――どういたしましてっ!」



奮発したカシミヤのニットが、早速涙で濡れてしまう。

十夜もそれを分かっているはずなのに、私を抱く力は弱まらない。



「十夜が、ありがとうって、言ってくれた……!」

「大袈裟なんだよ」

「だって、嬉しくて。自分の気持ち言ってくれるの、本当に嬉しくて……!」

「だーもー。泣くなって」



十夜は優しく拘束を解くと、チュ、と目尻にキスを落とす。

そのまま頬に、唇の端に滑るようなキスを落とし、おでこをくっつけたゼロ距離で私を見つめた。


夜景をバックに、互いの心臓の音だけを聞く。

とろんと甘いひと時を経て、唇に落とされるのは、無言の愛情。

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