俺様紳士の恋愛レッスン
重なるだけの優しいキスは、アルコールの味がした。

永く触れて、離れては、また触れて。

官能的な熱は一切ないのに、身体の芯が疼くような艶やかさに、身も心も溶けてしまいそうになる。



「――この家も、気に入ってもらえるか正直不安だった」



再び強く抱き締められながら、耳元で囁かれる声。



「お前のバッグから紙袋が見えた時、正直ニヤけた。このニットを見た瞬間は、息が詰まった」



その声色は不器用で辿々しく、聞き取るのがやっとの本音に、視界一杯に広がる黒が滲んでいく。



「……嬉しかった」



紡がれた感情に、私はまた、ニットを濡らした。

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