俺様紳士の恋愛レッスン
「ッ……、今日の十夜、優し過ぎる……」

「今日だけだからな」



はー、と吐き出された深い吐息に、今の十夜が一杯一杯であることを知る。

恥じを忍び、苦手な感情を言葉にしてくれた十夜に、溢れる嬉しさが止まらない。



「私ばっかり、こんなに嬉しいものもらってごめん。ニットだけじゃ全然釣り合わないよねぇ……」



けれど私には、十夜を喜ばせるような言葉のネタもなければ、気の利く妙案も浮かばない。



「……それなら」



不意に解かれた腕の力。

顔を上げた先には『いつもの』十夜がいて、心臓が鳴るのと同時に、涙が止む。



「足りない分は身体で払ってもらおうか」

「なッ!?」



でもこの家ベッドないよね!?と、真っ赤な顔で辺りを見渡す私に、十夜はククッと意地悪く笑う。

そして慌てる私の左手首を捕らえると、顔の前に持ち上げた。



「お前のここ、俺によこせ」

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