俺様紳士の恋愛レッスン
俺様なことを言う唇は、手の甲を滑り。

薬指の付け根に、そっと口付けを落とす。



「俺もお前を買ってやる」



彼は反対の手を、ポケットに滑り込ませる。

意地悪な笑みが企んでいることを考えては、「いやいやさすがにそれはない」と打ち消して、期待に跳ねる鼓動を必死に抑える。



「法律上、口約束であっても契約は認められる。しかしそれを証明するものがあってこそ、有効性は保たれる」



教えを説くように言葉を並べながら、取り出したそれを器用に片手で開ける。

サテンの真紅から覗く輝きに、息を呑んだ。



「結ぶ契約が無期限であるならば、それ相応の価値で信憑性を示さなければならない」

「ちょっ、待っ、心の準備がッ」

「残念ながら、お前に拒否権はナイ」

「ッ!」



ニヤリと笑う彼は、震える私の薬指へ、シルバーの証明を滑らせた。



「――契約成立だな」

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