俺様紳士の恋愛レッスン
顔を上げると、端正な顔の意地悪な笑みが間近にある。


『きゅん』どころではなかった。

心臓も呼吸も、血流までもが確実に、一時停止した。


久々に、死ぬかと思った。



「十夜のバカッ! かっこよすぎて死んじゃうよ!」



どんどんと胸を叩き、涙を滲ませた真っ赤な顔で、キッと睨みつけるのだけれど。



「はっ、何だよソレ」



返されたのは、少年のように無邪気な笑顔。

反則技に撃ち抜かれた私は、最早ぐうの音も出ない。



「死んだら契約がパァになるぞ」

「やだ! じゃあ死なない!」

「つーか死ぬとか許さねーよ」



彼は私の頬を強引な力で包み込み、無理やり顔を上げさせる。



「一生かけて指導してやるからな。覚悟しとけよ、エン

「うんッ!」



彼が新たに指導してくれることが、“幸せ”であることを願って。

落ちてくる契約の口付けを、そっと受け止めた。




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