俺様紳士の恋愛レッスン
「はい」



チャコールグレーの背中がピタリと止まると、再び始まるストップモーション。


端正な顔に良く似合う、凛と響く低い声。

射抜かれた心臓は、きゅうっと小さく縮こまる。



「あっ、あの……!」



全速力で走ったせいで、息が上がって苦しい。

けれどその場から動けない理由は、それだけではなかった。



「どうかされましたか」



スラッと長い脚は、あっという間に私の目の前までやってきて、



「あぁ、さっきすれ違った方ですね」



と、緩やかな笑みを落とす。



「――ッ!」



心臓が止まりかけたのは、走って乱れた動悸のせいではない。

これが俗に云う『きゅん』てヤツだ。

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