俺様紳士の恋愛レッスン
一瞬たりとも、その横顔から目を離せなかった。

夢ではなく、現実を語る男の人は、綺麗で強く、頼もしい。


6年の歳月を掛けて成形された男の人の定義が、ゆっくりと塗り替えられていく。



「……十夜」



彼は私に何でも教えてやると言った。

本当に何でも、教えてくれるのだろうか。



「もう一つ聞きたいことがあるんだけど」

「なに」



聞きたい、知りたい、彼のことを。

そう思うことはいけないことだと、正義を振りかざした表の私が言っている。

それでも感情を制御できないのは、きっと、私を惑わす真っ赤なアルコールのせいだ。



「彼女、いますか?」



その問いに、十夜は微かに目を開くものの、直ぐに「いねーよ」と吐き捨てる。



「ほんと?」

「あー」



頬が紅潮していく様子が、自分でもよく分かった。

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