俺様紳士の恋愛レッスン
真白の綿布に水彩絵の具を一滴垂らして、じわりと広がるような、淡い感覚に包まれる。

私は緩やかな裏色に、侵食されていく。



「じゃあ」

「エン」



それを遮断するかのように、落とされた警告音。



「確かに何でも教えてやるっつったけど、それは仕事のことのみだ」

「……ハイ」

「だからこれ以上は聞くなよ」

「……カシコマリマシタ」



プライベートの彼と話して分かったこと。

その眉間のしわは、不機嫌の証だ。

萌と感情表現の仕方が似ているなぁと、冷静に判断しているということは、私の酔いは今のヒトコトで覚めたらしい。



「ごめん」

「あ? 別に怒ってねーよ」

「でも不機嫌っぽいし」

「目つきがわりーのは昔からだ」



そう言う彼の眉間には、やはりしわが寄っている。


まさに先手必勝。

これで私は、さっきの女性について聞く術を、見事に失ってしまったというワケだ。
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