俺様紳士の恋愛レッスン
「……タカ、ちゃ」



頬を伝った水分は、薄い鉛筆の文字の上に落ちて、滲む。


――汚い。

なんて汚い色だろう。

私が流しているのは、汚い涙だ。



「ごめ、タカちゃ……」



私は今の今まで、一体何をしていたのだろう。

こんなにも優しく、美しい気持ちを無視して。



「ごめん、ごめんね……ッ!」



痛い。
痛い。

心臓が握り潰されるような、磨り潰されるような、えぐい痛み。

痛くて、苦しくて、吐きそうだ。



「も、やだ……」



汚い自分が嫌になる。

十夜のことを、好きじゃないとか恋じゃないとか、必死に言い訳を並べて、二次元だと言い聞かせて、ただ単にドキドキが欲しいだなんて。

そんなの、都合が良すぎる。


タカちゃん以外の人にときめくだなんて。

――こんなの、立派な浮気じゃないか。

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