俺様紳士の恋愛レッスン
「……ごめ、なさ……」



知っている。

私は自分に、嘘を付いている。


鮮やかさを失った愛情は、やがてモノクロへと変化した。

それは再び色を宿すこともなく、時だけを重ねた。


知っている。

私はタカちゃんのことを、もう、好きではない。

そんなの、とっくのとうに知っている。



けれど、離れることはできないのだ。

タカちゃんと離れてしまったら、私には何も残らない。


6年間の月日がもたらしたもの。

それは余りにも、大きくて。



「……と、ぅ……」



こんな時に浮かぶのは、緩やかで、意地悪で、私を翻弄するあの笑顔。

現実を語る、凛とした横顔。


私の知らない、男の人。



「助けて……」



私は最低な人間だ。

この日常を、本当は終わらせたいと思っているなんて。

この痛みから、救われたいと願っているなんて。

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