俺様紳士の恋愛レッスン
有無を言わせぬそのオーラに、さすがの私も口を噤(つぐ)み、渋々オフィスの案内を再開する。


それにしても驚いた。

感情を殺し、完璧な別人を創ることも容易い彼が、こんなことで照れるだなんて。


これがギャップ萌え、というやつなのだろうか。

完璧な人間だと思っていたけれど、ホンモノの彼は、実は最強に不器用なツンデレキャラなのだろうか。



片柳十夜という人物が、一向に掴めない。

掴めないからこそ、余計に知りたいと思ってしまう。


私には、先にケリをつけなければいけないことがあるというのに。

しかしダメだと思えば思うほど、自ら深みにハマっていっているような気がしてならない。



お陰でヒリッと痛むおデコの熱も、駆け足の心臓も、しばらく落ち着きそうにない。




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