好きだからキスして何が悪い?
「武将がみーんなイケメンなの! 乙女ゲームやってるみたいで楽しいから、すぐ覚えられるよ」

「……あんたはそろそろ二次元から抜け出しなさい」


冷めた目で言う文ちゃんだけど、参考書はしっかりと受け取る。

そんな彼女に笑いながら、目の前に如月くんがいることも構わず、オススメのイケメン武将について熱弁するのだった。



その日の放課後、バイトがある文ちゃんと途中で別れた私は、ひとり商店街にある本屋に立ち寄った。

このお店は小さいけれど、家から近いからたびたび訪れる。

今日のお目当ては、“ラブヒストリー”のニ冊目。

文ちゃんに貸したら私も次のやつが読みたくなって、買いに来たというわけだ。


お店に入ると、顔なじみの店長さんがニコッと笑顔を向けてくれる。


「おぉ、菜乃ちゃん! いらっしゃい」

「こんにちは、おじさん」


ひょろりと背が高く、少々髪が薄いおじさん。

優しくて明るいこの人が好きだから、ついここに寄っちゃうんだよね。

本の配置もすっかりわかっている私は、すぐにお目当ての参考書を見付け、レジに向かおうとした。

< 11 / 278 >

この作品をシェア

pagetop