好きだからキスして何が悪い?
玄関では美紅のサンダルを貸してもらい、終始文ちゃんのセンスと交渉力に感心しながら家を出た。

メイクをして、服装もいつもとちょっと違うだけで、なんだか新しい自分って感じでドキドキワクワクするなぁ。


眼鏡は変わらず掛けているけど、髪は三つ編みはやめろと言われたから下ろしている。

髪を結ばないで外出るのって何年ぶりだろう……。

首が暑いよー。まだ十一時前だけど、すでに太陽はギラギラと照り付けているし。


こんな暑い夏でも髪を下ろしている世の中の女子を尊敬しながら、胸あたりまで伸びた黒髪を揺らして駅前まで歩くと。


「あ、いたいた」


誰かを見付けて、おーいと手を振る文ちゃんの視線の先を見やると、ふわりとしたブラウンの髪を輝かせる男子も手を上げた。

……ん? あれって……!


「えっ、琉依くん!?」

「そう。今日はあの人も協力してくれることになってたんだ、実は」

「えぇ~!?」


もしかして、この間ふたりが耳打ちしていたのはこのこと? でも何で?

ふたりの意図がまだまったくわからない私に、ニコニコ顔の琉依くんが近付く。

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