好きだからキスして何が悪い?
すると、レジカウンターの中に見たことのない男子が立っている。

無造作に散らされた少し長めの黒髪、切れ長の二重の瞳に、スッと通った鼻筋、桜色に潤う形の良い唇……。

細すぎず、均整のとれたスタイルの良さも完璧。

漫画から抜け出してきたような美男子が、そこにいた。


か、か、かっこいい……!!

三次元にもこんな男子がいたよ、文ちゃん!!

思わず目を見張って、本棚の陰に立ち尽くしていると。


「ソウくん、ちょっといいかな?」


おじさんに呼ばれた彼は、事務所の入り口あたりで何かを話し始めた。

ときめく胸に参考書を抱きしめながら、その様子を盗み見る。


“ソウ”って名前なんだ、あの人……。

きっと新しく入ったアルバイトの人だよね。この間おじさん、求人出そうかなーなんて言ってたし。

ここに来れば、彼に会えるんだ。

これからもっとここに通ったら、もしかしたら私のことを覚えてくれるかな? そうしたら……


『君、本が好きなの? 俺も好きなんだ』


なーんて、美しい微笑み付きで言われちゃったり──!?

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