好きだからキスして何が悪い?
そうだ、好きな人に好きになってもらうためには、何かしらの努力が必要なんだ。

何もしないで手に入るほど、恋は簡単じゃないんだから。

しかもこの地味な私だもん。人の数十倍努力しなきゃ、あのウルトラG難度の彼を振り向かせることなんてできっこないよ。


「そうだよね……一歩踏み出さなきゃ、何も変わらないもんね」


自分に言い聞かせるように呟くと、よしっと気合いを入れる。

そんな私に笑みを向けるふたりと、美容院に向かって歩き出した。


琉依くんが行っているという美容院は、駅前の通りを5分ほど歩いたところにあった。

清潔そうでおしゃれな白い外観のそこには、男女ともにお客さんが入っている。


慣れない場所に緊張する私のために、琉依くんが入口まで付き添ってくれた。

担当の美容師さんと気さくに話した彼は、

「僕達すぐそこのカフェで待ってるから、終わったら連絡してね」

と言い残して、手を振って去っていく。


あぁ琉依くん、文ちゃん~!

気合いは入れたものの、やっぱりすごく心細い……。

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