好きだからキスして何が悪い?
そんな最初からバレていたなんて、ほんと恥ずかしい……。

超絶地味なくせにあの如月くんのことが好きだなんて、不毛な恋してるなーと思われてただろうな。


卑屈なことを考えてうなだれるものの、琉依くんはからかうこともなく真面目に言う。


「今日のこの計画も、奏のために菜乃ちゃんがやる気になってくれたらなーと思ってのことだったんだよ」

「そ、そうだったの?」


そっか……ただメガネクラから脱出させようとしてたんじゃなくて、私の恋のためにしてくれたことだったんだ。

ふたりがそんなことを考えてくれていたなんて。

改めて感謝の気持ちを感じていると、目を伏せた琉依くんが言葉を繋げる。


「でも……ちょっとしくじったかも」

「え……?」


“しくじった”ってどういうこと?

また首をかしげる私に、琉依くんは笑って首を横に振る。


「なんでもない。あ、もう溶けてきてるよ」

「わっ、ほんとだ!」


ひとまず話は後にして、カップの中で液体になりつつあるアイスをすくう。

お店を出る頃には、琉依くんの言葉も頭の中で溶けてなくなってしまっていた。


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