好きだからキスして何が悪い?
アイスクリーム屋さんを後にして、そろそろ帰ろうかと駅ビルの中を歩いていると。
「ひゃあ!」
「おっと、大丈夫?」
周りのお店に気を取られていて、段差に気付かずつまづいてしまった。
転びそうになる私の腕をとっさに掴んで、支えてくれる琉依くん。
「ごめん! ありがとう」
「やっぱりこうしてよ」
きゅっと再び握られる手と、とろけるような笑みにトクンと心臓が波打つ。
あーもう、何でこんなに自然と手を繋げるの?
アメリカナイズ、恐るべし……。
熱が集まる顔を俯かせて、手を引かれたまま歩いていると、急に琉依くんが足を止めた。
「──あ」
そう声を漏らした彼は、前方のある一点を見つめている。
不思議に思いながらその視線の先を追うと、ある人が女の子と一緒にいるのが見えた。
少し長めの黒髪に、ぶ厚い眼鏡。
制服ではなく、Tシャツに細身のジーンズというシンプルな私服姿だけど、あれはたぶん如月くんだ。
「如月くん……? 誰といるんだろう……」
ドクンドクンと、血液が送り出される音がやけに大きく感じる。