好きだからキスして何が悪い?
女子と、ふたりきりでいる。

軽くショックを受けながらも、目が離せない。

琉依くんも彼らを見ながら、少しだけ眉をひそめる。


「あの子は、たぶん中学の時の……」


そこから先を言うのをためらっている様子の彼を見上げ、促すように反すうする。


「中学の時の?」

「……奏の、元カノ」


言いにくそうに口にされた言葉は、薄々予想していたけど、やっぱりショックだった。

もう一度ふたりに目をやると、如月くんは何かを話しながら眼鏡を外し、綺麗な素顔を露わにする。

元カノさんは、栗色のボブの髪の毛を揺らして楽しそうに笑っていた。

大きめの口で屈託なく笑う彼女は、私とは真逆でとっても明るそう。


「……綺麗な子」


ぽつりと正直に呟くと、琉依くんは私に気を遣ってか、急に明るい調子で話し出す。


「でも、過去のことだからさ! 奏、今は本当に女っ気ないから、気にしない方がいいよ」

「うん……」


頷いたものの、気にしないことなんて出来そうにない。

いくら元カノでも、こうやって会っていれば、また元のサヤに収まることはいくらでもあるんだから。

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