好きだからキスして何が悪い?
「その手の早さはさすがだな。つい先月帰ってきたばっかなのに」


やっぱり誤解してらっしゃる!!

お互い反射的にパッと手を離すものの、時すでに遅し。


「いやいや、違うから!」

「何で隠すんだよ。別にいいよ、お前が誰とどう付き合おうと……」


そう言って、チラリと私を見た如月くんは、

「俺には関係ねぇし」

と、冷たく言い放った。


──ズキン、と胸に痛みが走る。

私には興味がないのだと、今はっきり言われたも同然なんだから。


自然と目線が落ち、離した手を無意識に握りしめていると、如月くんは琉依くんの横を通り過ぎていく。


「邪魔者は帰るわ。じゃ」

「あ、奏……!」


琉依くんが引き留めたものの、彼は後ろ手でバイバイをして去っていってしまった。

ひとつため息を吐き出した琉依くんは、申し訳なさそうに眉を下げる。


「ごめん、菜乃ちゃん」

「ううん! 琉依くんのせいじゃないよ。私が相手にされてないのは、前からわかってたことだしさ」


渇いた笑いを漏らしながら、いつもの調子で言った。

けれど、すぐに表情は曇ってしまう。

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