好きだからキスして何が悪い?
「……地味じゃなくなっても、やっぱり変わらないんだよ、何も」


イメチェンして、ちょっと舞い上がっちゃったんだよね、私。

ほんとバカだ。

どれだけ外見が変わっても、人の気持ちは簡単には動かせないっていうのに──。


「ごめんね。せっかく文ちゃんと協力してくれたのに」

「そんなことない。大丈夫だよ、奏には僕から誤解といておくからさ」


真摯に励まそうとしてくれる琉依くんは、本当にいい人。

そんな彼に、なんとか笑顔を作ってみせる。


「ありがとう。でも……ごめん、今日は帰るね」

「菜乃ちゃん!」


引き留める琉依くんの声に耳を貸さず歩き出したものの、これは言っておこうと思い立って足を止めた。

振り返ると、琉依くんは心配そうにしている。


「デート、楽しかったよ!」


にこりと笑って言うと、彼は面食らったようにキョトンとする。

でも笑顔が続かない私は、すぐにくるりと身をひるがえして、夕焼けに染まる街を早足で歩いた。


……彼に何とも想われていないのはわかっていたじゃない。

何の興味を示してもらえないのも当然のこと。

それなのに、こんなに胸が苦しくなるなんて──。




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