好きだからキスして何が悪い?
冴島 菜乃は、俺とは違って正真正銘の地味な女だ。
今時お笑い芸人くらいしか見ないきっちり三つ編み、あか抜けないすっぴんに不似合いな眼鏡。
正直、あまり関わりたくない外見の女子だ。
読んでいる本はだいたい恋愛小説らしいし、とにかく妄想がハンパない。
これは、名簿順だと俺の隣の席の藍原との会話が嫌でも聞こえてくるから知っている。
そんな地味女と、地味男を演じている俺が関わることなんてないと思っていたのに。
ネジが緩んでいる眼鏡を気にしつつ、用があって化学準備室に行ったある日のこと。
ドアを開けると、椅子の上に立った女子が目に飛び込んできた。
バランスを崩して落ちそうになった彼女を見たら、とっさに身体が動く。
下敷きになりながら、あぁ、放っておけばいいのに何でこんなことを……と後悔しつつ、その女子の顔を見て驚いた。
コイツ、冴島 菜乃じゃねーか……。
それと同時に眼鏡を落としたことに気付いて、バレるか?とギクリとする。
しかし、運よく如月 奏だとは気付いていないようだった。
このままさっさと去ろうとしたのだが、彼女はこんなことを言い出す。