好きだからキスして何が悪い?
*キスの練習をするんですか!?*
独特な匂いがする、静かな保健室のベッドの上。
如月くんが覆いかぶさっていた余韻を感じながら、私は仰向けに倒れたまま動けずにいた。
……さっきの如月くん、怖かった。
怒ったような、でも苦しげに歪む彼の顔が頭から離れない。
私、何か気に障るようなこと言ったかな?
思い返してみてもわからない。でも……
『……わかってんじゃん』
如月くんは、私のことを好きじゃない。
そのことだけは、また痛いほど思い知らされちゃったな。
イメチェンした日の一件があって以来、私は少し落ち込み気味で、如月くんと目を合わすことすらままならなかった。
劇の練習が始まる前、それを見抜いた彼は気遣うような言葉を掛けてくれた。
それだけで嬉しかったし、練習中のアクシデントにも、ここまで私を運んでくれたことにもドキドキしちゃってたけど、そんな自分が恥ずかしいよ。
どう転んでも、私は彼の特別な人にはなれないのに。
むしろ、琉依くんのことが好きだと勘違いされているみたいだもんね。
それを否定しても、何の意味もないんだろうな……。