好きだからキスして何が悪い?
思ったほど痛くない。

というか、お尻の下に床とは違う異物感が……。


「ってぇ……」


しかもすぐ近くから男の人の苦痛の声がする……って、えぇっ!?

バッと見下ろすと、私の下敷きになって尻もちをついている男子がいる。

まさか、椅子から転げ落ちる私をかばってくれたの!?


「ひゃあぁ!! ごめんなさいっ! 大丈夫ですか!?」


彼の太ももの上に座ったままでいることを忘れ、両肩に手を置いて顔を覗き込むと。

黒髪の隙間から切れ長の瞳がかいま見え、私は目を見開いて息を呑んだ。


ぞくりとするほど綺麗な、その印象的な瞳は一度見たら忘れない。

というか、昨日見たばかりだし!


「そ、そそそ、そ──!」


ソウくん!?

うそ、同じ高校だったの!?

信じられない偶然に舞い上がりそうになっていると、彼の柔らかそうな唇が開く。


「……どけ。重い」


冷たく光る瞳に睨み据えられて、私は瞬時に今の状況を思い出す。

か、顔近いし! 私何やってんの!

飛び上がるように離れると、床に正座して頭を下げた。

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