好きだからキスして何が悪い?
*今が、けじめをつける時*
Side◇如月 奏
午後7時50分。
俺は人波を掻き分け、約束の場所に向かって走っていた。
想定外の出来事で、約束よりも別のことを優先してしまった。
申し訳なさを感じながら、頭の中には菜乃の顔を思い浮かべる。
祭りに誘われた時、もし俺が行くことでアイツが喜ぶなら、それもいいかと思った。
琉依も行くって聞いて、ちょっとした危機も感じたし。
だから、早くアイツのもとにたどり着きたい。
……まぁでも、心配はいらないか。
藍原も一緒だと言っていたし、きっと三人で楽しんでいるだろう。
そう、安易に考えていたのがいけなかったのだと、すぐに後悔することになる。
待ち合わせ場所の赤い橋に着いた時、そこに菜乃達の姿はなかった。
やっぱりもうどこかへ行っているよな……と、橋を歩きながらあたりを見回した、その時。
目に飛び込んできた光景に、俺はくぎ付けになった。
──人目も気にせず、抱き合う男女がいる。
男の方は琉依だとわかるのに、時間はかからなかった。
まさか、ヤツが抱きしめているのは……。