好きだからキスして何が悪い?
「ごっ、ごめんなさい!! あの、お怪我は……」

「これくらいで何かあるほどヤワじゃねぇよ」


不機嫌そうな、トゲのある声色。

土下座しているような状態で、私はぽかんとしてしまう。

不機嫌なのは当然だろう。だって私に押し潰されちゃったんだもん。


だけど、なんか昨日の王子様みたいなイメージからすると……

“君こそ大丈夫? 怪我がなくてよかったよ”

なんて、クールな笑みとともに紳士的な言葉を掛けてくれそうな気がしていたから、ギャップがあるというか。

まぁ、私の勝手な想像だったから違っていて当然なんだけど。


それでも、私を助けてくれたのは事実。

背筋を伸ばして、もう一度深々と頭を下げる。


「かばってくれて、本当にありがとうございます」

「そっちが勝手に落ちてきただけだし」


うっ、またしても冷たい一言。

でも、入り口からここまでは数歩の距離があるし、彼が自らこっちに来ないと、私の下敷きになんてならないはず。

やっぱり、ソウくんは咄嗟に助けようとしてくれたんじゃないのかな……?

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